寒い寝室

ダビデ王の時代から電気毛布の時代に至るまで、冷えた寝台は厄介な問題だった。寝室のように、さほど重要でなく炉床も作っていない部屋を暖めた最初の道具は、火鉢である。
『ベッドの文化史-寝室・寝具の歴史から眠れぬ夜の過ごしかたまで』p339

寝室や寝具を暖める方法として、古代ローマではセントラルヒーティングの技法が生まれ、15世紀には「パン」と呼ばれる暖炉で暖められた熱い石または石炭を入れた、銅製または銀製のあんかようもので、寝具内を暖めていました。エリザベス女王の「パン」は宝石ならびに食器目録に登録されるほど立派で、ルイ14世は銀製の「パン」を10点所持していました。
湯たんぽは1681年にフランスの文献に、足の冷えに悩んでいたアヴランシュ司教が錫の水筒を使っていた。当時これが湯たんぽとして一般に売られていたと述べられています。
今日では、空調設備の向上や断熱などによって部屋全体が暖かく保たれています。

エアコンやストーブは、直接身体に当てないようにして、部屋が暖まったら自動で切れるようにタイマーを掛けておくと良いです。冬の寝室内が18~23℃になるように設定します。
電気毛布は寝る前、約1~2時間ほど布団を暖め、寝るときなったら電源を切って布団から出して寝てください。
あまり寝床内や部屋の中を暖めると、熱さで目が覚めてしまい再び入眠することが困難になります。

パジャマは厚手で首元や袖口、パンツの裾がすぼまっているモノの方が、身体の熱を外に出さず、しっかりと保温してくれます。
冬の朝は寝室の温度より布団の中の方が暖かいので布団から出たくなくなります。ですが、布団から出ないと体内時計が乱れてしまいより起きるのがつらくなります。事前にリビングを暖めておいたり、上着などを羽織って同じ時間に布団から出るようにしましょう。


就寝前には手や足の先から熱が放出し、深部体温を下げ眠る準備に入ります。冷え性の人は手足からの放熱がうまくできません。
就寝時の冷え予防を簡単に書いておきます。
・ハンドバス
スマホやパソコンでこった手の筋肉を、しっかりと温めることで手の細部に血液が回ることで、リラックスしたり上半身の血流が良くなる。40~42度のお湯で10分程温めてください。

・足湯
40~42度のお湯に20~30分ぐらいゆっくり入ります。足を入れる洗面器は、足をまげずにゆったりできる大きさモノを用意してください。足が冷えている人は、その冷たさでお湯が冷えてしまうことがあるので注意が必要です。終わったらすぐに足をタオルでふいて、足の温度を下げないようしてください。冷える季節はブランケットやハーフ毛布を羽織って、体温が下がらないようにしましょう。

・靴下
冷え性の方の中には、足を冷やさないために靴下をはいたまま眠る人もいますが、足からの熱放散の妨げになるほか、靴下の中で汗をかき、湿気をおびてかえって足が冷えてしまいます。また締め付けの強い靴下は足の血流を阻害するため、就寝時は靴下を脱いでください。
靴下をはく場合は、締め付けがなく熱放散がしやすい足先やかかとが空いているモノ。またはゆるめのレッグウォーマーが良いです。


参考書籍
Lawrence WRIGHT著 別宮貞徳ほか訳『ベッドの文化史-寝室・寝具の歴史から眠れぬ夜の過ごしかたまで』(株)八坂書房 2002
鈴木七重著『ゆるめる・温める・巡らせる』株式会社エクスナレッジ 2023
三船美保著『オトナ女子の不調と疲れに効く 眠りにいいこと100』株式会社かんき出版 2024


記事を書いた人
水谷祐介:睡眠健康指導士(初級)/睡眠栄養アドバイザー/オーガニックコットン販売士ほか
福祉系大学卒業後。パチンコ店員・コンビニ店長・ナイトサウナ店長を経て、家業の布団屋に。
2年間で約100冊の睡眠・寝具関連の本を読み現在も継続中。積読にならないよう気をつけています。

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